電通大の入試制度に関する考察

はじめに

さて、そろそろ2023年度前期の成績発表になるわけですが、その前に考えをまとめておきたかったトピックがあるので、今回はそれをまとめておきたいと思います。

表題のとおり、今回は「電通大の入試制度」に関して色々考察してみようと思います。

具体的には、次のような順番で考察を進めていきたいな、と思っています。

  1. 自分が受験した時の入試制度
  2. 現在の入試制度
  3. 総合型試験
  4. 情報科試験の導入(共通テスト&二次試験)
  5. 情報科試験を導入すると何が変わるの?
  6. まとめ

ここに書いた通り、主には「情報科試験を導入することによって何が変わるか」ということを考察していきたいな、と思っています。

結構自分の主観とかが入ってきていて、あてにならない点もあると思いますが、できるだけ事実に即した客観的な考察をしていこうかな(特に、「自分はこんな感じで受験しました、これにはこんな狙いが~」という話はしないつもりです)、と思っているので、お付き合いいただければ幸いです。

自分が受験した時の入試制度

前期日程

2022年度入試が最後の「大括り入試」だったわけで、現在のように類別で募集するのではなく、全体で定員を決めておき、とりあえず類関係なく共通テストと二次試験の合計の点数で上から定員分取っていく、という感じでした。二次試験の点数が高い上位45人は優先合格となっていましたが、そういう人は共通テストでもいい点が取れていると思うので、誤差な気がします(一応共通テストの勉強を一切せず優先合格枠に懸けて二次試験だけやるって手段もありますがそんなリスキーなことする人はいないでしょう)。

共通テストは5教科7科目課されました。具体的には以下の通り。

  • 国語
  • 地理歴史(世界史B、日本史B、地理B)、公民(現代社会、倫理、政治・経済、倫理・政治・経済)から1つ
  • 数学(ⅠA・ⅡB)
  • 理科(物理、化学、生物、地学)から2つ
  • 外国語(英語(リーディング&リスニング)、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語)から1つ

理科に関しては、二次試験で物理と化学が出題されるため、勉強の兼ね合いから見て物理と化学を選択する人が多数派だと思います。

さて、その後課される二次試験(個別学力検査)の内容は以下の通りです。

  • 数学(120分、数学Bの確率・統計分野を除く全範囲)
  • 理科(120分、物理と化学の全範囲)
  • 英語(90分)

前期日程の場合、共通テストの配点は上の順番で100-50-100-100-100の合計450点、個別学力検査の配点は上の順番で200-150-100の合計450点でした。これらを合算して900点満点で合否を決めるというわけですね。

特徴なのは、前期日程での点数評価に共通テストが半分を占めているということです。東工大など共通テストの点数を足切り判定のみで用いる大学と比べ、優先枠を度外視すれば合格には共通テストである程度高い点数を取る必要がある、ということですね。

これは、このページに書いてある以下のことを反映していると言えます。


大学入学共通テストは、高等学校での学びにおける広く基礎的な学力を測るため、5教科7科目を課し、個別学力検査は、情報・理工学分野を学ぶために必要な学力「数学、理科(物理・化学)」、および国際性を備えた人材を育成するために必要な語学力「英語」を入試科目として課します。解答は記述式により、解答のみならずその解答に至る思考・判断の過程および表現力も含めて評価します。


後期日程

後期日程では、前期日程と比べて以下のような違いがあります。

  • 類ごとの募集(事前に希望を出しておき、合格者がその希望に基づき振り分けられていく)
  • 共通テストの配点が上の順番で50-50-50-100-50の合計300点
  • 個別学力検査において、数学の試験時間が150分に
  • 個別学力検査の配点が上の順番で300-200-100の合計600点
  • 足切りが存在する

類ごとに募集をしているというのが大きな違いでしょう。入学後、類が決まっているかいないかで前期か後期かがわかってしまうので、色々拗れたりします(なんとなく、後期入学勢の方がすごい、みたいな風潮があったような気がする)。

また、共通テストの配点の全体に占める割合が低くなっています。半分から1/3になっていますね。そして、共通テストの配点の中では、理科の割合が高くなっています。

個別学力検査に関しては、数学が150分に延長され、配点も300点と全体の1/3を占めています。理科の配点も少し高くなり200点、数学の配点のみ変わっていません。

これを見るに、後期試験では「数学及び理科の分野で高い能力を持つ者を採用する」ことが重視されている気がしますね。

また、倍率が8倍を超えた場合は東工大のように共通テストの素点を用いて足切りを行うとされています。

現在の入試制度

基本的には自分が受けた時と大差ありませんが、決定的に違う点として、「前期日程でも類別募集を行う」ことがあります。第2希望まで出し、点数が高い者から希望の類に振り分けられていく、といった感じです。

これで先述の「類が決まってるか否かで前期後期が分かる」ことはなくなりますね。特に、「入学してから希望してない類に配属される」状況があり得たことから「入学前からどの類かわかっている」に変わったことは大きいと思います。転類などを考え始めるタイミングが前倒しになることもあり得るわけですし。

22生までにあった「1年前期を過ごした後GPAボクシングに負けて希望してない類に行ってしまう」ことがなくなったわけですが、個人的にこの状況はかなり悲惨なものがあると思うのでなくなって正解な気がします。

カリキュラム的にも、最初から類が決まっていた方が何かと都合がいいことが多いと思います。履修計画も立てやすいですしね。

総合型試験

電通大にも総合型試験があります。2024年度入試に関しては、この資料によると次のような感じらしいです。

  • 各類7名ずつ募集
  • 第1志望のみ選択
  • 「入学希望者が自ら表現する能力・適性、学習意欲、目的意識等に重点を置いて、評価を行う」(原文ママ)
  • 第一次選考では、志望理由書、活動(各類で指定するもの)実績報告書、調査書により、高校在学中の活動内容、基礎能力、適性に関する評価が行われる
  • 第二次選考では、活動実績報告書の内容に関するプレゼン、質疑応答を中心とした面接・口頭試問が行われ、理工系への適性、主体性といった大学での学修に必要な知識、技能、思考力、判断力、表現力が総合的に評価される

書いた通り、かなり厳しい内容になっているように思われます。実際、定員が合計21人となっているにもかかわらず、実際の合格者数はその人数に足りていないなんてこともザラにあります。

その代わり、この厳しい試験を乗り越えた人たちは、各々入学後も活躍しています。団体活動や各種大会などで成果を残している人ばかりですね。

情報科試験の導入(共通テスト&二次試験)

さて、現在の入試制度は上記のようになっているわけですが、これは2025年度入試から大きく変わることになります。

このページを見てみると、2025年度入学者選抜について書かれています。これを見ていきましょう。

まず大きいこととしては、「大学入試共通テストで情報Ⅰが課される」「前期の個別学力検査において、従来は物理と化学が課されるところを物理・化学・情報から2つ選択することになる」の2つが挙げられますね。

特に、共通テストで情報Ⅰが必要になることがかなり大きいのではないでしょうか。これは電通大に限ったことではなく、東工大、東北大、東京大などの大学でも同様で、文系理系関係なく必須科目となるわけです。5教科7科目から、6教科8科目になるというわけですね。

電通大だけ情報Ⅰの配点が高いと言われるとそうでもなく、前期後期共に他の大学と同じ50点分です。

点数配分がどうなるかというと、以下のようになります。

  • 共通テスト
    • 前期は「国語100-地歴公民50-数学100-理科100-情報50-外国語100」で合計500点
    • 後期は「国語50-地歴公民50-数学50-理科100-情報50-外国語50」で合計350点
  • 個別学力検査
    • 前期は「数学200-理科/情報200-外国語100」で合計500点
    • 後期は「数学300-理科200-外国語100」で合計600点
  • 合計
    • 前期は1000点満点
    • 後期は950点満点

情報が入る分、配点が上がっている感じですね。唯一変わっていないのは後期の個別学力検査でしょう。

後期を受験する人には他大学の前期試験を不合格になってしまった人が多いので、情報を課さないことによって改めて情報の二次試験対策をしなくてもよいようになっている感じがします。

情報科試験を導入すると何が変わるの?

共通テストの情報Ⅰの割合に関してですが、電通大を含む諸大学で50点とそこまで高い配点ではないです。初回だから様子見ということもあるでしょうが、扱い的には地歴公民と同じくらいらしいです。

二次試験に関しても、まだ情報科は必須ではなく、物理化学を選択すれば従来と同じ形で受験ができます。おそらく情報を選んだから採点を別枠で行われる、なんてことはないと思うので、過去問が揃うまでは情報を選択しない人が出てくる可能性があります。

しかし、二次試験で情報科を課すということは、初の試みと言われています。

この試みを行う理由として大きいこととしては、やはり「情報科に深い理解がある人材を招きたい」ということが挙げられると思います。他の大学にはない電通大の大きな個性としては、「情報理工学一本の理系国立大学」ということがあるでしょう。この入試制度の変更によって、「電通大情報科に興味があるという自分の個性を生かしたい」と考える人が電通大に入りやすくなる可能性があります。

例えば、電通大が将来的に共通テストの配点で情報のそれを大きくしたり、二次試験で情報を必須にしたりすると、ますます情報科に興味がある人にとって有利になります。

これによって、入試の時点で大学が求める「情報理工学に興味があり、その分野で活躍できる人材」を多く採用することができるようになると思われます。これは先ほど述べた電通大の長所をさらに伸ばすことにもつながるのではないでしょうか。

他の大学落ちてからここ受けるんだから情報は必須にしないでほしいって人に対しては、後期だけは情報を必須にしなかったり、共通テストの配点を下げたり、なんて対策ができるでしょうね。

そもそも、情報にあまり興味がないのに東京の理系大学だからという理由で入ってくる人を弾けるという面で、情報科の入試への取り入れはものすごく意義があるのです(個人的にこれが一番の問題だと思うので)。

まとめ

話がとっちらかる前にここらでまとめておこうと思います。

とにかく、電通大の入試改革によって、「情報化社会の中で大学側が求める人材をより集めやすくなる」ことが大きな違いとして顕れてくるでしょう。

入試の時点で自分の適性を生かし、希望の類を勝ち取ることができるようになる可能性が高くなることはとても意義のある事だと思います(情報の分野に適性がありⅠ類向きなのに成績が足りず他の類になってしまったという人を知っているのでなおさら)。

自分の適性を生かせる入試時点で類を決める事ができるというのも良いと思います。そもそも入学後の成績で類を決めるということ自体かなりヤバい制度だったと思います。なくなって良かったですね(これにはかなり深い状況も絡んでくるのですがここでは割愛します)。

個人的に、かなり問題だなと思っていたことに、情報に興味がなさそうなのになんで電通大に?って見える人が一定数いることがあるんですね。そういう人たちはこの大学には明らかにミスマッチで、誰も幸せになりそうにないので、そういう人たちが将来的に減っていくんだろうな、と思わせられる改革だったと思います。

これに関連して、「電通大が第一志望か/将来的に情報に関することをしたいか、ということと入学後の情報に関する成績(コンリテや基礎プロ)の相関」が知りたいですね。電通大で勉強したい!って人ほど情報科に適性があるというデータがあれば、この入試制度の変更の意義もさらに深まることになるでしょう。

とにかく、将来の電通大は、今まで以上に情報科に適性がある人材が集まって、情報化社会の中で活躍できる人材が育つ「ユニークな」大学になっていくんだろうな~と思いました。