G-1.0を初回で観てきたよ
はじめに
お疲れ様です。Udonです。
今回は『G-1.0』を公開初日の初回で観て来たよというテーマで話していこうかなと思います。
全部とは言いませんがゴジラ映画はちょくちょく観てきた経験があり、『シン・ゴジラ』を劇場で観なかったことをかなり後悔していたということもあって。この映画は初日に観たいなと思っていたところでした。
そんなわけで観た感想を書いていきたいと思います。
率直な感想
まず言いたいことは、この映画は本当に素晴らしいものだったということです。『シン・ゴジラ』とは違った意味で「現代だからこそ描けたゴジラ」という感じでした。
人間ドラマのパート、ゴジラによる蹂躙の場面、そして最後の戦いなどが素晴らしい演出と演技によって彩られ、最初から最後まで楽しむことができました。
自分の感想ですが、ストーリーや設定なども無理なくまとまっていて、観ていて違和感などを感じる場面はほとんどありませんでした。前半が人間ドラマ中心でまとまりがない、朝ドラみたいでゴジラっぽくないという意見も見受けられましたが、前半の人間関係があるからこそそれがゴジラに壊されたことへの絶望感、これ以上奪われないためにゴジラを倒さなくてはならないという後半のテーマの強調、そして未来を守るためにこれ以上命を失ってはならないということの補強にもなっていたんじゃないかな、と個人的には思っています。
テーマが「生きる」ということもあり、最後のワダツミ作戦で死者が出ていなかったことからも、この映画が「未来を守るために戦い抜き、生きて帰る」ということを伝えたかったんだろうということがうかがえました。
あととにかくゴジラが怖い。あとでも述べますが、今回のゴジラは完全に「人を殺すために活動している」という感じが強く、自然災害をモチーフにしているだろうと思われるシンゴジ版よりも個人的には恐ろしく感じました。そんなゴジラに人々が翻弄される、ということは、良い感じに原点(1954年の初代ゴジラ)回帰しているのかな、と思いました。
あと、最後の戦いの盛り上がりも素晴らしく、積み重ねてきた描写からこの戦いがある、みたいな感じの展開で燃えました。
ストーリーについて
大まかな流れとしては、
- 大戸島にゴジラ出現、整備員たちが死亡
- 東京に戻った主人公、ヒロインとの暮らしを始める
- 機雷撤去の仲間と出会い、暮らしが充実し始める
- 幸せの日常の中でゴジラ出現
- 海上でのゴジラとの戦い
- 銀座にゴジラ襲撃、ヒロインを失う
- ゴジラ対処作戦の立案、準備の進行
- 主人公、橘を探し出し最後の戦いへの準備
- ワダツミ作戦
- 全員生還、ラストシーンへ
といった感じに進行していました。起承転結がしっかりしているという印象がありました。
ゴジラという怪物から逃げてしまったことにより主人公へ呪いがかかるというのが「起」で、そこから何とか立ち直ろうとする「承」、ゴジラに大切なものを奪われゴジラを倒すための決意を固める「転」、そして最後の戦いの「結」という感じにまとまっていましたね。
ドラマパートが半分くらいと結構長めでしたが、ドラマパートがあるからこそゴジラが倒すべき存在であるということや主人公たちの行動原理がつかめたりしたので、いい塩梅だったかなと個人的には思います。怪獣の登場シーンが多くないと怪獣映画とは言えないって主張もわからなくはないですが、この映画はゴジラが「戦争の亡霊」といった風に描かれ、ゴジラを倒すことで戦争を終わらせるというある種の「戦争映画」とも言える感じだったほか、ゴジラが主人公たちを動かす舞台装置のような役割を担っていたのかなとも思っています。怪獣映画と戦争映画など、様々な映画の要素を貪欲に詰め込んだからこその構成だと言えます。
登場人物について
全員書いてると長くなってしまうので、気に入ったキャラに絞って書いていきます。
主人公・敷島
演じている神木隆之介さんの演技が素晴らしく、整備員たちを見捨てたトラウマからPTSDを発症したり、黒い雨を浴びながらゴジラへの憎しみを爆発させるシーンはとても心に訴えてくるものがありました。
あと、橘さんを説得するシーンもかなり印象に残っています。
参謀・野田
こういう参謀的なキャラはジャンルとして好きです。メーサー光線も何にもない時代にゴジラに勝てたのはこの人含めた作戦の裏方の活躍ありきのことでしょう。参謀にも関わらず臆することなく最前線で指示を出していたのもよかったです。
艇長・秋津
個人的に佐々木蔵之介さんの演技が気に入っているのですが、今回も良かったですね。頼れる年長者って感じがすごいしました。
若者が未来を担えるように全力で戦っているということにすごく感動しました。
太田さん
最初は主人公曇らせ要員かな~とか思ってどうせすぐフェードアウトするだろうと思っていたらちゃっかり最後まで出ていた人。
登場から30分も経たないうちに良い人やんって感じになりましたね。
この手のキャラがドラマパートを朝ドラっぽくしているのかな~とか思ったり。
ゴジラについて
歴代でもっとも怖いなと思ったゴジラでした。シンゴジとかは不完全体の時などに可愛げが多少あったり、平成シリーズとかでは人間と通じ合うなどカッコよさが感じられたゴジラでしたが、今回のゴジラは間違いなく対話不能な恐ろしさの塊だと感じました。
大戸島のシーンから分かる通り、人間を食べるために襲うとかじゃなくて殺すために襲ってる感じがしました。殺された人が原型をとどめている(食いつくされていない)ことからもそれが伺えます。
そして極めつけの放射熱線。過去作品では連射したり熱線で空飛んだり対空防御に使ったりしていましたが今回の熱線は「溜めと反動がデカい一撃必殺技」といった印象でした。
尻尾の先から棘が立ち上がらせ、青いチェレンコフ光を放ちながら棘がどんどん上がっていき、おそらく点火に使う酸素を急激に吸い込むという長い溜めモーションから放たれる熱線は、歴代トップクラスの威力だったのではないでしょうか。
発射時に棘が一気にガンって下がるのがとても良かったです。宇宙戦艦ヤマトの波動砲みたいにああやって押し込みつつ発射というのがたまらないです。めちゃくちゃかっこいい。
銀座で熱線を放ち、巨大なキノコ雲を作り周囲を焼け野原にして、さらに黒い雨まで降らすというのは、本当に「歩く核兵器」という感じでした。あんなの東京に原爆が落とされたのと変わりないですもんね。
ただ、連射ができないという弱点も抱えているようでした。発射後は体組織が少なからず焼き切れているのが見受けられています。ワダツミ作戦ではその点をつかれ、囮をつかまされていました。超再生能力があるとはいえ、体組織の再生に手間がかかるという弱点はいい調整だったと思います。あんなの連射されたら終わりですよ。
放射熱線の演出は、カッコよさと恐怖が共存した今までにないもので、とても印象に残りました。
あと顕著なのは再生能力の高さですね。毎秒全身が新陳代謝してるのかというレベルですさまじいスピードで回復が可能だというのはとんでもない脅威に感じました。シンゴジは兵器を迎撃していましたが、このゴジラは食らって回復してゴリ押すみたいな戦闘スタイルでしたね。高雄の砲撃が結構効いてるじゃんと思った矢先、即座に回復して放射熱線で完全破壊してくるのは恐怖でしかありませんでした。
ワダツミ作戦において深海に沈められたり浮き上げられたりしても熱線のチャージが止まるくらいで絶命には至らないというのも超生物の貫録を感じました。
メインの作戦、サブの作戦、主人公による弱点への捨て身の特攻をもってやっと撃退できたというとんでもない耐久力もこのゴジラの恐ろしさを際立てる要素になっています。しかも口への攻撃が熱線のチャージ中じゃなかったら倒せなかったと思います。おそらく発射寸前に口内で爆発が起き、体内の核エネルギーが暴走して崩壊に至ったという感じでしょう。人間の勝利は本当にギリギリだったと言えます。
それでもなお倒しきれていない描写があるんだから恐ろしいものです。シンゴジよりは原型とどめていない感じでしたが。
そういえばまだ核の力を得ていない不完全体の時に20mm当ててたらどうなったんですかね。体組織の堅牢さが核分裂炉の制御のために後から備わったものだとしたら、まだ何とかなったのかもしれませんが、真相は闇の中ですね。もし冒頭で銃撃してて倒せたとしたら、その後の被害はまったくなかったことになるので、主人公の罪がより重くなってしまいますね、、、
戦闘描写について
戦闘描写は最初の大戸島のシーンと回収船での機雷攻撃~高雄の砲撃シーンと国会議事堂前の戦車とワダツミ作戦において描かれていました。
大戸島
トーチカに逃げ込んだ整備員たちが小銃で抵抗するも虚しく虐殺されていくのは衝撃的でした。主人公が逃げた後もなんとか射線に誘導しようとしている人さえいてやりきれなくなりました。
夜明けのあと、橘さんが死体を引きずっているシーンも惨くて衝撃的だったのを覚えています。特に死体の表現が…
回収船~高雄沈没
機雷2つでギリギリの戦いをしているというのがハラハラしました。13mm機銃程度じゃなんともならない感じで、機雷が直撃しても効いていないというのは絶望感しかないです。
めちゃくちゃ慌てながら投げ込んだ2つめの機雷が爆発せず、なんとか機銃で撃って口の中で爆発させてダメージを与え、高雄が間に合うというところもパニック映画みたいな感じでドキドキしました。明らかに絶望的な力関係を諦めない気持ちでどうにかするというのは好きな展開です。
高雄とゴジラの戦闘ですが、主砲の連続攻撃でのけぞりはしたもののすぐ回復されてしまうというのが本当に脅威ですね。
このゴジラに正攻法は通用しないということを強調するようなパートでした。
国会議事堂前
東京上陸後のシーンはゴジラに一方的にやられている感じがすごかったですが、四式中戦車が頑張って攻撃をしていましたね。まぁ効かなかった上に熱線で蒸発させられていましたが。
あと、あれだけ吹っ飛ばされたらアメリカにも被害出てるのではないんですかね、、、まぁ協力してくれなかったってことはソ連の方がゴジラより脅威だったのかそれとも対して被害がなかったのか。
ワダツミ作戦・誘導
橘さんを説得し、何とか戦闘機「震電」(実在する機体らしいです)を整備した主人公敷島は、最後の戦いに臨みます。
戦闘機に乗った経験を生かし、想定より早く上陸したゴジラを機銃で牽制しつつ相模湾沖まで誘導する場面では、ゴジラの攻撃をギリギリで回避し続けるという神技が見られました。これは震電の機動力と敷島の技術あってのものでしょう。
爆弾を載せるため燃料や弾薬を削っているにも関わらず最後まで戦い抜けたのは、やはり敷島の技術が高いからこそでしょう。このあたりは冒頭の着陸シーンや機雷撤去のシーンで示されてきていますね。
トップガンとかもそうですが、やはり戦闘機のシーンは手に汗握ります。
ワダツミ作戦・海戦
そして誘導してきたゴジラに対し最後の戦いを挑む人間たち。
まずは一番の脅威である熱線を封じるべく囮作戦が結構されます。舵にロープを巻き付けて重りで固定というアナログなやり方で船を突っ込ませ、熱線を撃たせて隙を作ります。この肉を切らせて骨を断つ感じが工夫ありきのバトルって感じでとても良かったです。
この隙を逃さずフロンガスのボンベを巻きつけます。妨害が入らないように敷島がフォローしつつゴジラの周りを取り囲み、衝突を恐れず船をニアミスさせて巻きつけるという一連の流れはハラハラしました。ああいう「多少の損傷は構わん!!」みたいなの大好き。
そして放射熱線発射ギリギリまで粘りつつ最大の効果が得られるタイミングでボンベを起動し一気に深海へゴジラを叩きこみ、生きていると分かったらすかさず浮上させるという流れ。そして案の定起きるトラブル。そしてそのトラブルをカバーするべく仲間が集結するといった展開。とてもベタですが、一番熱い展開でもあります。
そして、引き上げられ体組織が崩壊しかけているにも関わらずすべてを薙ぎ払おうと熱線を溜めるゴジラ。ダメかと思った瞬間、ここぞというタイミングで飛び込んでくる敷島。こういうのでいい。
そして頭を吹き飛ばされ、核の光を漏らしながら崩壊するゴジラ。そして生還する敷島。人間の勝利を飾るにふさわしい、美しいシーンでした。
最後のシーンについて
正直、最後主人公が脱出して生還する、というところまでは読めていました。その後、復興した街の中で血を吐き、黒い雨の後遺症が残っていた、、、みたいな感じでエンドロールかな~と思っていましたが、ヒロインが実は生きていたって展開で終わりましたね。よく考えると原爆病が発症するのは被爆から何年か経ったあとだということは知られているので本編中になくても違和感はないですね。ただ、黒い雨を浴びて長生きができるかというと、、、って感じはします。
何で生きてるのに葬式を済ませてしまってるねんという感じなのは、ゴジラ災害+戦後のダブルパンチで行方不明者の確認がままならなかったということから混乱があったんだろうと解釈しました。橘さんを捜すとき人探しが困難だと役所の人から言われてたシーンもありましたしね。
ただ生きてました~ってだけだとご都合主義って感じがしちゃいますが、ちゃんと生きていた理由付けがされていると感じます。それは「ゴジラとの融合」ですね。首筋が意味深に映るシーンがありますが、包帯の下から黒いシミのようなものが出てきています。強調されて映されている以上、ゴジラの体組織が融合したとみてよいと思いました。銀座がゴジラに破壊しつくされた後、ゴジラの体組織がばらまかれたという報道がありました。その際、ヒロインの体にその一部が混入し、ゴジラ特有の生命力の一部によって生還できた、という感じなんでしょう。ゴジラの生命力・再生力の高さは劇中で散々示されています。
そして、この奇跡の生還があるからこそ、ラストのゴジラの復活シーンの絶望感が強調され、またこの映画がゴジラ映画であるということの証明になっているんじゃないかな、と思っています。
奇跡の生還はゴジラの生命力の証明である。だからこそゴジラは倒せない。最後にまた復活してしまうのである。ヒロインがただ帰ってきてゴジラが倒せましたなんて都合のいい展開なんてない、というメッセージを感じました。言ってしまえば「ヒロインがゴジラに助けられた」という展開なんでしょう。皮肉なことに。
「ゴジラはまだ生きている」という展開ははっきり言って「ゴジラ映画あるある」です。記憶に新しいのはシンゴジのラスト。尻尾から巨神兵のような人型ゴジラが出てこようとしているシーンで映画は終わります。『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』のラストでも、海底で蠢くゴジラの心臓が映ります。また、ゴジラではありませんが『ゴジラ対ヘドラ』のラストでもヘドラの復活が示唆されています。『ゴジラ対デストロイア』でもゴジラ死と新生が描かれています。
これらのことから、「ゴジラは死なない。また人間の前に顕れる。」という事がゴジラ映画の大きなテーマなんじゃないかと思っています。それは1954年東京湾で倒された後すぐに別個体として復活しアンギラスと戦ったというところからずっと続いているテーマであり、ゴジラ映画の根幹をなすものなのではないでしょうか。
そして、この作品はそういったテーマをしっかりと最後に改めて示した。という事だと考えています。
そして、これはTwitter(現X)で見かけた意見なのですが、タイトルの-1.0と言うのは、1954年の初代ゴジラの前日譚といった位置づけの作品だから、というものにめちゃくちゃ納得してしまいました。初代の世界観とこの映画の世界観が共通かどうかは定かではありませんが、おそらく作中では7年後くらいにまた東京にゴジラが襲来してくる、、、のではないでしょうかね。
あとこれは偶然の一致かもしれないのですが、黒い雨を浴びるなどして放射能汚染を受けた被爆者たちが原爆病を発症したのはおおよそ被爆から7年後ほどらしいです。もしかしたら主人公は、ゴジラの襲撃を再び受けるとともに、核の呪いに苦しめられてしまうことになってしまうかもしれませんね。
気になったこと
あまり引っかかった所はないですが、主人公の掘り下げが少ないってことは感じています。
大戸島でゴジラから逃げ、整備員たちを死なせてしまったという呪い、そこからPTSDを発症するまでに追い詰められ、やっと立ち直れたと思ったら、自分が取り逃したゴジラによって大切な人を亡くしてしまう、そしてそこから命を捨ててでもゴジラを殺すという覚悟を決める、といった流れはしっかりと描かれており、説得力があるなと思いました。しかし、最初の部分ですね。なぜ特攻から逃げたのか。ゴジラに機銃が撃てないシーンから、元々臆病者だったのではないかということはわかりますが、決定的な描写に欠けているような気がしてなりません。特攻から逃げた理由辺りはもう少し描いてほしかったなと思います。
おわりに
ゴジラ70周年企画という大きな役目を果たす、とても素晴らしい作品だったと思います。上映後拍手が起きていたことからも、自分含め多くの人に感動を与えてくれた映画だったことは間違いないでしょう。
あ、そういえばタイトルロゴのGってよく見るとゴジラの形してるんですね。スタッフロールの時気づきました。
まだ観てない人は、絶対に損しないと思うので、時間が許せば映画館まで足を運んでもらいたいなと思います。
最後までまとまりのない駄文にお付き合いいただきありがとうございます。ではまた。